【後編】ブランドの想いを紡ぐ、循環型Eコマース「180°」に込めた想い

【後編】ブランドの想いを紡ぐ、循環型Eコマース「180°」に込めた想い

【後編】ブランドの想いを紡ぐ、循環型Eコマース「180°」に込めた想い

【後編】ブランドの想いを紡ぐ、循環型Eコマース「180°」に込めた想い

2025/03/17

compassion-based-circular-economy-02
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前半では、主に私個人としてのキャリアの歩み方や、循環型Eコマース「180°」を始めるに至った経緯などを中心に書いてきました。

https://raas.180-inc.com/news/compassion-based-circular-economy-1

後半では、その具体的な取り組みと、他社事例(海外含む)を交えた内容で循環型経済を推し進めるこれからのEコマースについての在り方についてまとめていければと思います。

大阪市、堺市のアクセラレーションプログラムへの参加

新たな挑戦としてスタートしたこの取り組みを更にブラッシュアップするため、外部の知見を取り入れながらサービスの言語化を図ることを目的に、いくつかのアクセラレーションプログラムに応募しました。その中で採択されたのが、OSAKA INNOVATION HUB主催の「SIO BASIC」と、堺市主催の「SAKAI NEXT IMPACT CATAPULT」の2つのプログラムでした。

また、堺市様からは別途ご縁をいただき、年に一度開催される市の報告会「中百舌鳥イノベーションミーティング」にもお声がけいただき、発表の機会を得ることができました。

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中百舌鳥イノベーションミーティングにて

なお、当初は「ゆずり合いアプリ」なるものを構想し、サービス構想を練っていました。本、玩具、洋服など、お金を介さず何でもアプリ内でゆずり合える仕組みです。物をゆずる側には、提携する子育て関連サービス(レジャー施設、飲食店、アパレルなど)で使えるクーポンを発行し、その利用額に応じて手数料を加盟店から得るというモデルです。このアプリを通じて廃棄問題の解決とビジネスの両立を考えていました。

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Figmaでのプロトタイプ作成 - 1
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Figmaでのプロトタイプ作成 - 2

しかし、調査を進める中で、海外では「Resale as a Service」「Branded Resale」「Recommerce」といったビジネスモデルが成長していることを知り、現在のブランド主導で二次流通が実現できる、循環型Eコマース「180°」へと構想を発展させました。前者のサービスモデルを捨てたわけではありませんが、後者のモデルの方がコミュニティを意識した事業設計が可能で、それぞれが持つブランドの特性を活かせると感じたためです。

ブランドごとのコミュニティがたとえ小さくとも、それが多発的に色々なブランドごとに機能すれば、社会にとっては大きなムーブメントとなる可能性があると考えています。

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リセール市場の成長に伴い販売モデルもアップデート

また、現在のモデルへ変更したもう1つの背景には、私個人が起業当初から理想としていたアウトドアブランド「Patagonia」の影響もあります。Patagoniaはこのリセールモデルのパイオニアであり、加えてこのサービス事業者である「Trove」へもPatagoniaの投資会社であるTin Shed Venturesから出資をしています。コロナ禍以降、欧米ではブランド主導のリセール市場が急成長し、特に欧州(EU)ではブランドの廃棄規制などの法的要因も相まってトレンドとなっています。

https://wornwear.patagonia.com/

適正な価格で、適切な人々へ、的確な場所で流通させる

環境意識の高まりやトレンドの変化を追い風に、世界的にもリユース市場は右肩上がりに成長を続けています。

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日本国内のリユース市場:2030年までには4兆円に達する見込み(自動車中古販売を除く)

特に若者を中心に「リユースネイティブ」と呼ばれる世代が増え、中古品に対する意識が大きく変わりつつあります。Z世代と呼ばれる今の10〜20代前半の人々は、大量生産された似たり寄ったりの商品よりも、1点ものや少量生産されたアイテムに価値を見出し、中古品であっても数万円出すことを惜しまない傾向があります。ファッションは時代の流れを映し出す表現のひとつであり、この価値観の変化はサスティナブルな消費行動の広がりを示していると考えられます。

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参照:https://www.jiji.com/jc/v8?id=20240814keizai161(時事通信社)

しかしその一方で、ブランド側にとっては現在の二次流通市場に対して課題があります。例えば、意図しない形で転売が行われたり、自社で購入された商品が他社のプラットフォームで流通することで機会損失が生じるといった問題です。また、著名なブランドでない限り、リユースショップでの買取価格は非常に低く、二次流通品が「どこで、適切な人々の手に渡すか」が極めて重要なポイントとなっています。

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前述のブランド「nino」の買取価格 - 18点で126円だった結果(上代は5,000円以上)

そこで、循環型Eコマース「180°」では、各ブランド主導型のリセールモデルを取り入れ、大量生産・大量廃棄の課題を解決しつつ、ブランドが利益を生み出せる仕組みとしてスタートしました。

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各々のブランド毎にリセールが行えるコンセプトで事業をスタート

ユーザーがブランド内で購入した商品を簡単に再販(リセール)したり、他のユーザーに譲渡(「ゆずり合い」)したりできる仕組みにより、ブランド内で商品が循環し続ける持続可能な経済圏の構築を目指しています。

ブランドが自社の中古品を扱うメリット

サービスの説明をする際、よく次のような質問を投げかけられることがあります。

・中古品を扱うと新品が売れなくなるのでは?
・セールやアウトレットと何が違うの?

まず、「中古品を扱うと新品が売れなくなるのでは?」という問いに対して、私なりの見解から述べたいと思います。

新品販売と中古品販売のバランスを取ることは重要ですが、中古品が売れることで新品の売上が落ちるのではなく、むしろ新たな購買サイクルを生み出す可能性が高いと考えています。リセールモデルでは、「売り手」や「ゆずり手」に対して、販売価格の「100%ポイント還元」というインセンティブを提供することで、手放した人々が再び新品を購入する頻度が増える傾向があります。これにより、「不要なものを手放し、新しいものを購入する」というサイクルが生まれます。また「ブランド公式」という場所の強みを活かし、価格崩壊を防いだり、販売手数料を掛けずにサービス提供ができるといったメリットもあります。

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循環型Eコマース「180°」のリセールモデル

さらに、海外の事例を見てみると、中古品を購入するユーザーの60%以上がまだそのブランドを購入したことがない新規顧客であることが分かっています。つまり、中古品市場を通じて新たな顧客層を引き込み、それが新品の購入に繋がるチャンスを生み出すポテンシャルを秘めています。

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参照:thredUP_2023_Resale Report(左グラフ)

次に、「セールやアウトレットと何が違うのか?」という点について。

前提として、セールは基本的にシーズン商品の売れ残りを処分するためのもので、「新品かつシーズンもの」に限定されます。一方、アウトレットはシーズン外の在庫を処分する役割を果たしますが、これも基本的には新品商品が対象です。対してリセールモデルは、B品(サンプル品や返品を含む)やユーザーから提供された中古品の両方を扱う場として機能します。

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それぞれの違いと役割

イメージとしては、セールやアウトレットといった既存の販売チャネルに加えて、各ブランドが「リセール」という新たなチャネルを持つような形です。これにより、新品だけでなく中古品を含めた多様な商品を提供でき、在庫の最適化だけでなく、価格帯ごとに異なる顧客のニーズにも応えることが可能になります。

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新たな販売チャネルとしてのリセール

ブランド側にとっては、自社のリユース品を軸にコミュニティ形成を強化することで、顧客との関係性が深まり、購入頻度や単価の向上が期待できます。ユーザーに「参加する満足感」を提供するブランド体験がLTV(顧客生涯価値)向上のきっかけとなり、特にブランドを「同じ価値観を共有できるプラットフォーム」として認識することで、より深いエンゲージメントの向上につながると考えています。

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ブランドサイト内で行うゆずり合い「nino loop」

「ブランドの想いを紡ぐ」に込めた想い

住宅メーカーの一つに「BESSの家」というブランドがあります。現代のライフスタイルに適したログハウスをコンセプトに、特にアウトドア好きの人々を中心に人気のあるハウスメーカーです。

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参照:https://www.bess.jp/welcome/

BESSには根強いファンが多く、そんなブランドの特性を活かして、ユニークな取り組みが始まりました。それが、「LOGWAYコーチャー」と呼ばれるものです。これは、実際にBESSに住んでいるユーザーが「暮らしの伝道師」として、これからBESSの家を購入しようと考えている人たちに向けて、住まいのメリット・デメリットを伝える仕組みです。

従来のハウスメーカーのように、販売側が一方的に商品の良さを伝えるのではなく、BESSを愛する人々が自らの経験をもとに暮らしの魅力を共有していく。「BESSが好き!」という共通の価値観があるからこそ、似た趣味やライフスタイルを持つ人が自然と集まり、SNS上でも積極的に情報交換が行われています。

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参照:https://note.bess.jp/n/n7180df02c59a

そこでBESSは、さらにユーザー同士のつながりを深める場を提供しようと考え、「LOGWAYコーチャー」制度をスタートさせました。この制度では、先輩ユーザーのリアルな暮らしの声を聞けるだけでなく、薪ストーブやピザ窯の使い方、収納の工夫、さらにはウッドハウス特有のメンテナンス方法など、メリットだけでなくデメリットも含めた実践的な情報を共有できます。

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参照:https://note.bess.jp/n/n7180df02c59a

ブランドを起点としたユーザーの横のつながりが生まれることで、単なる口コミ以上の影響力を持ち、ブランドへの共感がさらに広がっていく効果があります。

https://loglog.bess.jp/archives/category/logway-coacher

少し話しが脱線してしまいましたが、伝えたかったのは「コミュニティの重要性」です。BESSの取り組みと同様に、循環型Eコマースにおいても、同じブランドを愛するファン同士がつながる場をつくることで、新たな購買体験を生み出し、ブランド価値の向上にもつながっていくと思っています。これは、既存のフリマアプリやリユースショップでは決して得られない、ブランドだからこそ提供できる独自の価値だと考えています。

忙しい現代人にとって、社会課題を「自分ごと」として考えるのは簡単ではありません。一人ひとりの行動が変化を生むと分かっていても、意識しなければ行動にはなかなかつながらないのが現実です。そこで私たちは、「ブランドという共通のシンボル」が主導することで、人々の意識を自然と変え、社会課題の解決につなげることができるのではないかと考えています。

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パタゴニア 大阪・心斎橋 - 映画鑑賞会での集い(筆者、中央右奥側)

事業の説明をする際、よくチャリティーコンサートを例に挙げることがあります。好きな音楽やイベントを楽しみながら、そのチケット収益が社会貢献につながる仕組み——。ブランド主導のリセールサービスも同じように、消費者が好きなブランドを通じて自然と行動変容が起こり、結果的に廃棄物削減やCO₂排出の抑制に貢献できる仕組みを作れるのではないか、そんな未来を信じて事業に向き合っています。

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中長期の目標として実現したいビジョン

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

今後も「想いを紡ぐ、循環型経済をつくる」ビジョン達成に向け、持続可能な未来をファンとともに築くための挑戦を続けてまいります!

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